ウシュマル遺跡(マヤ文明)メキシコ
ウシュマルは紀元500年ころに建設が始まったとされるが、多くの建物は700年から1100年にかけて建設された、後古典期(900年〜1500年)の古代都市だ。ユカタン半島西部地域で最も強大な勢力を持ち、東部地域で最強だったチチェンイツアと同盟を結ぶことでユカタン半島のほぼ全域を支配していた。
  ユカタン半島のマヤ遺跡の中では建造物の保存状態が極めて良く、これを修復することで、マヤの華麗な壁面装飾であるプーク様式が見事に再現された貴重な遺跡だ。



ウシュマルは、メキシコ・ユカタン半島の中心都市メリダからバスで2時間程の所にある。メリダからウシュマル経由の路線バスがあるが、メリダ発の遺跡ツアーを利用するほうが楽だろう。

 

ウシュマルの象徴的な建造物、高さ36mの魔法使いのピラミッド。
 ピラミッドの多くは四角錐の形をしているが、このピラミッドは楕円錐形をしているのが特徴。四辺の角を丸くした階段状のピラミッドは他にもあるが、このように1段が長いスロープ状のピラミッドは非常に珍しい。この形状により、姿が優美で、どっしりとした迫力を感じる。
 以前は、ピラミッドの上に登ることができたが、現在は遺跡保護のために登れなくなっている。


魔法使いのピラミッドの西に隣接して建つのが、ウシュマルのハイライトともいえる壮麗な建築物である尼僧院(Cuadranglo de las Mnjas)。中に四角い庭(Cuadranglo)を持つ複合建築物で、東西南北に異なったデザインの建物が建てられている。写真は、南側の建物に設けられた中庭への通路。マヤの持ち送り式アーチになっている。奥には北の建物が見える。


シンプルだが力強いデザインの東の建物。後ろに魔法使いのピラミッドの頭が見えている。表面の装飾は、中央にプーク様式で頻繁にみられる雨の神チャックの顔、左右の6つの逆台形は両側に頭がある蛇を並べたものだ。


華麗な装飾が施された北の建物。四方の建物の中で、この建物のみ高さ7mの基壇の上に載っている上、基壇中央には神殿装飾の部屋が設けられている。東と西は上写真のように2.5mの基壇のみで、南は基壇がない。このことから、北側が最も重要な建物、あるいは広場での儀式の際に王や高位神官が使用した施設であったことがうかがえる。


雨の神チャック像の拡大図。4つの顔が積み重なっているデザインだが、彫刻した切り石を組み合わせる、立体ジグゾーパズルのような技法で作られている。


尼僧院の南、遺跡のほぼ中央部に位置するのが「総督の館」。堂々とした石造りの建物に驚嘆したスペイン人が名付けた建物。長さ187m、幅153m、 高さ12mの基盤の上に、長さ100mの巨大な建物が乗っている。大きさ、デザイン的な迫力、壁面の切石モザイクの精緻さ、どれをとっても、現存するマヤ建築の最高峰といえるだろう。


「総督の館」の正面装飾。写真では分かりにくいが、中央に尼僧院の東の建物にある両端に頭がある蛇の意匠が用いられ、上部には雨の神チャックの顔が並んでいる。渦巻き文様と斜め格子のデザインを組み合わせた非常に精巧なモザイクだ。




勝手に評価/お勧め度 ★★★★★

★★★★★=文句なしに素晴らしい、絶対お薦め。
★★★★=かなりいい、一度見てほしい。
★★★=なかなかいい、見逃すのは惜しい。
★★=まあまあ、期待しないで見てみてはどうでしょう。
★=特にお勧めはしません。

ウシュマル遺跡はユカタン半島ではチチェンイッツアと並ぶ巨大遺跡だが、特にプーク様式の壁面装飾の美しさで群を抜いている。
 魔法使いのピラミッドも規模が大きいし、装飾の見事さは一見の価値あり。周囲は低木のジャングルに囲まれており、遺跡奥のピラミッドに上ると緑に囲まれた遺跡の美しい光景を見渡すことができる。
  アクセスは多少面倒だが、旅行社のツアーがあり、ウシュマルとカバーの2ヵ所を同時に訪ねることができる。周辺施設もかなり充実しているが、その分、入場料は高い。

 

ラテンアメリカ博物館
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