エル・タヒン遺跡(トトナカ文明)メキシコ
メキシコ湾岸の古代遺跡で最も有名なのがこの「エル・タヒン」だ。この都市を築いたのは、一般にはトトナカと呼ばれる文明に属する人たちだといわれており、西暦600年ころから1200年ころにかけて栄えた。ただし、最近の研究では、マヤ文化圏の北限に居住していたワステコ・マヤ(ワステカ族)によって築かれた可能性があるそうだ。いずれにしろ、トトナカやワステカは、あまり有名な文化ではないため、特に日本ではあまり知られていない。しかし、壁龕のピラミッドを中心に、神殿や住居跡など、数多くの石造建築物が残されており、かなりみごたえのある遺跡だ。1992年に世界遺産に登録された。


エル・タヒン遺跡に一番近い都市はメキシコ湾岸に近いポサ・リカ。メキシコシティから直接ポサ・リカに行くバスがある。

ポサ・リカからはエル・タヒン行きの路線バスがある。ここで1泊するならメキシコ情緒が色濃く残るパパントラがお勧め。パパントラからはローカルバスで15分から20分でタヒンに着く。

 

エル・タヒン遺跡といえば、「ラ・ピラミデ・デ・ロス・ニチョス」、つまり「壁龕のピラミッド」が最も有名だ。この窓のような壁龕は1年の日数と同じ365あり、暦の役割を果たしていたようだ。上部が崩壊しているため、現在の高さは約20mだが、元はもっと高かったという。それほど大きいピラミッドではないが、特異な姿は、見る者を驚かせるほどのインパクトがある。


壁龕のピラミッドを後方から見たところ。たくさんの窓のようなくぼみを並べ、その上に屋根のひさしを付けたような独特の建築スタイルだ。


球戯場に併設された神殿。この写真のように、エル・タヒンの建築デザインは、テオティワカンに見られるタルー(斜面)とタブレロ(垂直面)の組み合わせに加え、タブレロ部分に壁龕や写真のような円柱装飾を用いることと、タブレロの上にせり出した屋根のようなひさしを設ける複雑な形状になっている。この神殿は上部が崩壊してしまっているが、2層目は長いタルーの上に1層部と同じタブレロ部分があり、その上に3層もあったと予想できる。


天然ゴムのボールを使った球技が行われた球戯場。エル・タヒンは古代球技発祥の地とも考えられるほど球戯場がたくさんあり、その数は17にも上るという。写真のように、規模も作りもかなり立派で、神事と球技の結びつきの強さが感じられる。


トトナカは「ボラドーレス(飛ぶ人)」という儀式で有名。これは、30メートル以上もある長い棒の上から、4人の人間がロープで逆さ吊りになって回転しながら降りてくるものだ。エル・タヒン遺跡の入り口前にあるボラドーレス専用のスペースで毎日何回か行われている。そのほかメキシコシティなどでも見ることができる。


勝手に評価/お勧め度 ★★★
★★★★★=文句なしに素晴らしい、絶対お薦め。
★★★★=かなりいい、一度見てほしい。
★★★=なかなかいい、見逃すのは惜しい。
★★=まあまあ、期待しないで見てみてはどうでしょう。
★=特にお勧めはしません。

 知名度の低い遺跡だが、遺跡のエリアが非常に広く、建物の数も多い。壁龕のピラミッドのような不思議な姿をした建造物は他にはないだけに見る価値あり。遺跡見学のベースには近くにあるパパントラという小さな町がお勧め。典型的なメキシコの町で、映画の舞台にでもなりそうなほど雰囲気がいい。

 

ラテンアメリカ博物館
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