クスコ(インカ帝国)ペルー
インカは広大なアンデス地域を支配した巨大文明を表す言葉として定着しているが、本来の意味は部族の支配者である王を示す言葉だったようだ。彼ら自身は王国のことを4つの地域という意味の「タワンティンスーユ」と呼んでいた。その首都がクスコ(世界のヘソ)だ。スペイン人たちがこの都にやって来たとき、巨石を組み合わせた建築物とふんだんな金を使った装飾の見事さに驚愕したという。当時のヨーロッパにも、これだけの大都市は少なかった。しかし、スペイン人侵略者たちは、この壮麗な都を、土台の石組みだけを残して破壊してしまった。現在は、スペイン人が建てた建物の土台として残る石組みに、インカの技術の素晴らしさをしのぶのみである。
  写真はアルマス広場の噴水とインカ皇帝像。後ろはラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会

 

クスコ中心部の地図


アルマス広場周辺

クスコの中心にあるアルマス広場に面して建てられているカテドラル(司教座聖堂)。街全体が、スペイン植民地時代の面影を強く残しており、落ち着いたいい街だ。


アルマス広場の周囲には二階建ての典型的なコロニアル様式の建物が連なっている。この建物は、一階の通路の上にせり出した二階を等間隔に並べた柱で支えるスペインのコロニアル様式によく見られる柱廊という形。これだけ規模の大きい柱廊を持つ街並みは中南米全体でも数が少ない。


夜のアルマス広場。観光客が夜遅くまでそぞろ歩きを楽しんでいる。周囲にはバーやレストランが集まっており、華やかな雰囲気だ。周囲の山を埋め尽くす家の明かりもたくさん見える。


アルマス広場から北西に伸びるプロクラドーレス通りには土産物屋、旅行社、レストランなどが軒を連ねる。観光客が絶えない賑やかな通りだ。


サクサイワマン要塞近くにある、サン・クリストバル教会の鐘楼から見たアルマス広場。


12角の石周辺

インカ時代の石垣が今でも残るアトゥンルミヨク通り。石垣は剃刀の歯が入る隙間もないほどピッタリと巨石を組み合わせてあり、インカの石組み技術の素晴らしさがわかる。この中に12角の石がある。


これが有名な12角の石。大きな石を複雑な形に加工して組み合わせるているが、鉄器を持たなかったインカがどのようにしてこのような石の加工を行ったのかは謎だ。


12角の石がある壁は、インカ時代に第6代皇帝インカ・ロカの宮殿の土台として作られたものだ。12角の石は北側にあるが、東側のインカ・ロカ通りにはピューマなどの形がはめ込まれている。ちょっと見ただけではわからないが、ここに行くと説明してくれる人がいる。


西側の壁には出入り口があり、右側の中ほどには12角の石より角が多い「14角の石」がはめ込まれている。小さいので、ほとんど見る人もないが、石職人の遊び心が面白い。


コリカンチャ(太陽の神殿)

アルマス広場の南東に位置するサント・ドミンゴ教会が建つのは、インカ時代はコリカンチャと呼ばれた太陽の神殿があったところ。


インカ時代に作られた美しいカーブを見せるコリカンチャの石組み。インカ民族にとって最も重要な神殿だっただけに、他の場所とは異なる非常に丁寧な加工が石に施されている。


右側がコリカンチャの石壁。整然と積まれた石が美しい。12角の石の壁のような遊びが見られないのは神殿であるためだろう。


サント・ドミンゴ教会の内部。ここは修道院の建物だが、回廊にはインカの石組が残っている。


内部にあるインカの石組み。石は丁寧に加工されていて、重厚感がある。


インカの石組みで作られた部屋を上から見るとこんな感じ。


クスコの散歩道

クスコの良さは、町並みの美しさと歴史の積み重ねが生んだ情緒にある。標高3400mもあり、坂も多いために歩くのが大変だが、バラエティに富んだ景観が楽しめる。


中心部の西側にあるサン・ペドロ市場周辺には買い物などをする大勢の人たちが集まり、熱気に溢れる。クスコの庶民生活を知るにはいい場所だ。ただし、治安が良くないので歩く際は注意が必要だ。


果物などが安く売られている店。世界三大美果の一つとされるチリモヤも奥にあった。


 

ラテンアメリカ博物館
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