チャンチャン遺跡 (チムー王国)ペルー
チャンチャン遺跡はかつてチムー王国の首都だったとされる。チムーは西暦900年ころから1470年ころまで栄え、現在のペルー北部海岸一帯を支配する王国を築いた。1470年代にインカ帝国がペルーの山岳部から海岸部に版図を広げたことで両国は衝突。当時のチムーの国力はインカをはるかにしのいでいたにもかかわらず、長年の統治による制度疲労を起こしていたことから、あっけなく滅ばされてしまったのである。
 チャンチャン(輝く太陽という意味)は、ペルー北部の都市トルヒーヨの近くに位置する、20平方キロにわたる広さを持ち、最盛期には20万〜25万人が生活していたという南米最大級の古代都市だ。その中には、一人の王に一つ作られたという宮殿、あるいはシウダデラと呼ばれる区画が9つ存在しているが、現在公開されているのはその一つである「Palacio NIK-AN(ニック・アン宮殿=中央の家)」のみだ。1986年に世界文化遺産に登録された。

チャンチャン遺跡はペルー北西部の海岸に位置するトルヒーヨの近くにある。個人でも行けるが、月のワカとチャンチャンの両方に1日で行くツアーがあるので、これを利用したほうが楽だ。

 

ニック・アン宮殿は幅330m、奥行き444mあり、高さ10〜12mもあるというアドベの壁で囲まれている。


宮殿の北側に位置するサッカー場ほどの広さがある儀式の広場。奥に傾斜路があり一段高いテラスが設けられているが、儀式を行う時はここに王や神官が並んだという。


儀式の広場のテラスの上にある狭い出入り口には衛兵のような人形が立てられている。壁にはデザイン化された動物が浮き彫りにされているが、これは南米原産のヌートリアというネズミの仲間らしい。


儀式の広場の横にある「魚と鳥の廊下」。波と魚と海鳥を組み合わせたデザインのレリーフが施されている。


チャンチャン遺跡の特徴的な格子状の壁が見られるのがアウディエンシアという王に貢物を献上する場所。格子は魚網をデザインしたといわれているが、暑い場所のため風通しがいいように作られているわけだ。


アウディエンシアにはペリカンなどのレリーフが施されている。きれいに残っているように見えるが、これはほとんどがオリジナルを元に再現したレプリカだ。写真は海岸部に多いペリカンのデザイン。


儀式用の溜池。大きさは148m×48m、深さは4m。灌漑施設によって集めた水を溜めるチャンチャン最大の池。ちなみに都市全体では120以上の池があったということだ。


王が葬られていた埋葬基壇の中心部。王の墓の周囲には44の墓があったという。



ドラゴンのワカ(虹の寺院)

チャンチャン遺跡に近くにあるのがドラゴンのワカ。これは、チムー時代の10〜11世紀に作られたピラミッド型の建造物。その壁にドラゴンのように見える動物を組み合わせたレリーフが残されていることから、調査を行ったアメリカ人の考古学者がこの名を付けた。しかし、チムーにはドラゴンのイメージが存在しないため、最近ではレリーフのイメージから虹の寺院(Templo del Arco iris)と呼ばれることが多い。

ここは、雨乞いなどの儀式を行った宗教施設だったと考えられている。1段目の基壇の高さは4.5mあり、その中央部から2段目の基壇が立ち上がっている。基壇の縁には14の収納庫が作られていて、儀式の際に、そこに神への貢物を捧げたということだ。


レリーフの拡大写真。中央に虹がかかり、その両端が怪物の顔になっている。これが西洋のドラゴンのイメージと重なった。怪物の二つの頭は口を開けて二人の人物を咬もうとしている。虹の下には鳥とも魚ともつかない姿もある。また、枠の上段の杖を持った人物は踊り子または戦士ということだ。




勝手に評価/お勧め度

★★★

★★★★★=文句なしに素晴らしい、絶対お薦め。
★★★★=かなりいい、一度見てほしい。
★★★=なかなかいい、見逃すのは惜しい。
★★=まあまあ、期待しないで見てみてはどうでしょう。
★=特にお勧めはしません。

 アドベ作りの泥壁が続く、かなり規模の大きい遺跡。壁に描かれたデザイン化された魚や鳥なども、それなりに面白い。ただ、単調な景色が続き、見る者を驚かせる古代文明の凄さがなかなか感じられないのが残念。

 

ラテンアメリカ博物館
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