カカシュトラ遺跡(マヤ文明) メキシコ
羽毛の蛇に乗る鷲の戦士を描いた色鮮やかな壁画。
カカシュトラは、ユカタン半島西部のシカランゴを出自とするオルメカ人の末裔である、オルメカ・シカランカと呼ばれる人たちが建設した都市とされている。定住が始まったのは西暦400年ころと推定されるが、都市が絶頂期を迎えたのは、メキシコ中央高原の巨大都市テオティワカンや近隣の大都市チョルーラが衰退した後の、西暦700年から900年にかけてとされる。オルメカ・シカランカの人たちは広範な地域を移動して交易する商人だったそうで、カカシュトラという名前も、ナワトル語で商人が品物を入れて持ち歩く籠から来ている。
 遺跡の見所は西暦700年前後に描かれた壁画群で、特に、青を基調とした長さ22mに及ぶ「Mural de la Batalla(戦いの壁画)」は、古代の戦闘が生々しく描かれていて迫力がある。



 メキシコ中央部のトラスカラ州の州都トラスカラから車で50分程度のところにある。プエブラのバスターミナルから出ているトラスカラ行きバスに乗り、途中のサカテルコという町で下車。バスの停留所に乗り合いのワゴンが停まっているので、それに乗れば50分〜1時間でカカシュトラ遺跡の前に着く。

 

カカシュトラ遺跡の入口。 モダンなデザインの門のようだ。中には博物館もあり全体的に整備された立派な施設だ。

丘の上にある、都市の中心となる大基壇(el Gran Basamento)。1975年に近くの村人が遺跡がある小山を掘っていたところ、壁画が出てきたため当局に通報。これによって、この遺跡の重要性が認知された。

大基壇の全体図。長さが200m、幅が110m、高さが25mある。また、周囲には小規模な基壇や神殿も点在している。

大基壇の正面。基壇全体を保護するため巨大な金属製の屋根が掛けられている。


大基壇の上部。中央部から北側を見たところ。数本の柱が立つ場所の下に「戦いの壁画」が見える。







 大基壇の南西側にある「金星の神殿」の柱にも人物の壁画が残る。この人物のお腹の部分に描かれているのが金星のシンボル。左は博物館に展示されている模写。
カカシュトラの壁画でも特に重要とされるのが「赤の神殿」に残るこの壁画。カカシュトラの経済基盤である農業と商業が表現されており、人物は年老いた商業の神。この壁画からは、メキシコ中央高原の複数の文化やマヤ文化の影響が見て取れるということで、交易によって栄えたカカシュトラの文化的な性格を示しているとされる。


壁画だけでなくマヤの石碑のデザインに似たレリーフもあるのだが、上部が崩れてしまっている。


 大基壇の北側にある神殿の列柱下部の壁面に幅22mに及ぶ「戦いの壁画」がある。


青を基調とした壁画は薄くなっているものの、保存状態はそれほど悪くない。この地域は乾燥地であり、地中に埋まっていたために、あまり劣化が進まなかったのだろう。


「戦いの壁画」という題名の通り、鷲戦士とジャガー戦士が戦う場面が描かれている。ここでは、青と白の服を着た鷲戦士が槍を突きつけられており、右側に黄色い服を着たジャガー戦士がいる。


戦う戦士たちが生き生きと描かれている。中には倒された戦士が身体を切り裂かれている様子などの詳細な描写もある。


「戦いの壁画」に隣接した建物Aの入り口を飾る戦士の壁画。右側には鷲戦士、左側にはジャガー戦士がいる。この壁画は色がハッキリ残り、保存状態が非常にいい。


鷲戦士は羽毛の蛇に乗り(トップの写真)、このジャガー戦士はジャガーと蛇が合体したような動物に乗っている。


北端にある建造物の上から見た大基壇の全体。中央部に宗教的儀式を行ったと見られる広場「沈んだ中庭(El patio hundido)」がある。


カカシュトラに隣接した山の上にもピラミッド型神殿がある。こちらはショチテカトルと呼ばれる遺跡で、カカシュトラよりも古い紀元前700年ころから都市が形成され始め、紀元300年ころに最盛期を迎えたとされる。紀元後100年ころには放棄されたが、その後、ここに移り住んだカカシュトラの人々が利用したという。ちなみに、カカシュトラから通じる道は、道路の柵に施錠されていて通れなかった。


大基壇から見た周囲の景色。山の上に位置するため見晴らしがいい。この時代にメキシコ中央高原に造られた主要都市は、外敵の進入をいち早く知るため山の上に位置しているものが多い。巨大都市テオティワカン滅亡後、様々な勢力がしのぎを削る状況になっていたのかもしれない。



勝手に評価/お勧め度 ★★★
★★★★★=文句なしに素晴らしい、絶対お薦め。
★★★★=かなりいい、一度見てほしい。
★★★=なかなかいい、見逃すのは惜しい。
★★=まあまあ、期待しないで見てみてはどうでしょう。
★=特にお勧めはしません。

あまり大きな遺跡ではないし、建造物も特徴に乏しい。しかし、数カ所に残されている彩色壁画は見事だ。メキシコの古代遺跡に残された壁画はマヤのボナンパク遺跡が知られているが、ここの壁画群はそれを凌ぐ規模と美しさだと言える。まだ、あまり知られていない遺跡のため、人も少なく、ゆっくり見学できるのもいい。周囲の環境も、山の上に位置しているため自然が豊かで見晴らしがいい。周辺施設はカカシュトラの出土品や、壁画の模写などを展示した博物館や売店などがある。


 

ラテンアメリカ博物館
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